メニューにジャンプ コンテンツにジャンプ

トップページ > 診療科・部門 > 診療科 > 消化器・肝臓内科 > 診療内容紹介 > C型肝炎治療

C型肝炎治療

C型肝炎の自然経過

  • 本邦でのC型肝炎ウイルスに感染されている方の多くは過去の手術、輸血や血液製剤の使用による感染によるものです。1989年にC型肝炎ウイルスが発見されて以降、輸血、血液製剤などの検査、感染拡大への対策が取られたことにより、新規の感染者は著しく減少しています。
  • C型肝炎ウイルスに感染すると、約30%はウイルスの自然排除が見られますが、約70%では持続感染、慢性肝炎へと移行すると言われています。慢性感染した場合の自然排除率は約0.2%/年と極めて稀であり、多くの方は炎症の持続により肝臓の線維化をきたし、肝硬変・肝細胞癌と進展してゆきます。

C型肝炎の自然経過

C型慢性肝炎に対する治療の変遷

  • 肝臓の炎症や線維化の程度が低い方からの発癌は少ないとされています。C型慢性肝炎の治療目標は、炎症の沈静化、線維化進展の抑制、発癌予防の3つです。その治療法としては、C型肝炎ウイルスを排除する抗ウイルス療法が中心となります。
  • ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンシーといった肝庇護療法によって炎症の改善がみられれば、発癌の抑制効果かあることは、これまでに多数報告されています。またC型慢性肝炎では過剰な鉄が炎症を惹起するとされ、鉄制限や瀉血療法も治療に有効です。
  • 1986年に非A非B型肝炎に対するインターフェロンによる治療効果が報告され、1992年より本邦でも、C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療が開始されました。当初はその治療効果は低いものでしたが、その後リバビリンの併用(2001年)やペグ化製剤(2004年)など治療薬の改善により難治とされる遺伝子型1型、高ウイルス量の患者さんでも約半数の方で持続的ウイルス陰性化(SVR: Sustained Viral Response)が得られるようになりました。

C型慢性肝炎に対する治療の変遷

C型慢性肝炎に対する新しい治療法

  • 2011年テラプレビル(テラビック®)の発売以降、ウイルスの増殖を直接抑制する治療薬(DAAs: Direct Acting Agents)の時代となり、既存のペグインターフェロン(ペガシス®,ペグイントロン®)、リバビリン(コペガス®,レベトール®)との併用により、治療効果は劇的に改善しました。現在ではテラプレビルと同様シメプレビル(ソブリアード®)、バニプレビル(バニヘップ®)がペグインターフェロン、リバビリンとの併用に認可されています。
  • 2014年にはダクラタスビル(ダクルインザ®)、アスナプレビル(スンベブラ®)の経口剤のみの治療が開始され、C型肝炎治療は更に新たな時代を迎えています。2015年3月には遺伝子型2型のC型慢性肝炎に新たなDAAsであるソフォスブビル(ソバルディ®)とリバビリン(コペガス®)の併用療法が認可され、治験での非常に高いSVR率から、実臨床でも高い効果が期待されています。また、難治とされる遺伝子型1型の方にも今後も新規薬剤の開発が進行しており、その高い治療効果は国内外の学会や論文にて発表されており、本邦でも使用可能となることが期待されています。
  • DAAsはその高い治療効果が期待される一方、ウイルスに直接作用する薬剤のため、薬剤耐性の問題があります。当院では併設する肝炎・免疫研究センターと協力し、治療前に薬剤耐性を検査し、十分に治療の適応を協議の上で治療方針を決定しております。

C型慢性肝炎完治の後の問題

  • インターフェロン治療によりC型肝炎ウイルスが排除される(SVR)と、炎症が鎮静化し、肝病変の進展や肝発癌が抑制されることが明らかとなっています。しかしながら、SVRが得られた方の中でも発癌が見られることから、SVR後も定期的に通院し、診察や検査を受けることが重要です。また、SVR後の発癌に寄与する因子として飲酒、肝脂肪化、インスリン抵抗性等が挙げられており、ウイルスが排除されても、アルコール・糖尿病等については引き続き注意が必要です。
  • かりに肝がんが見つかっても、手術やラジオ波治療によって肝がんを治療し、その後にインターフェロンやDAAでC型肝炎ウイルスを排除すれば、がんの再発防止や生存率の向上が認められたとの報告があります。
  • DAAsによる経口剤のみの治療によってSVRが得られた場合においては、インターフェロンと同程度に肝がんが防止できるかどうかについてまだ科学的根拠がなく、今後注意深く観察していく必要があると考えております。

当院では2008年10月の肝炎・免疫研究センター以来、国内外より多くの患者様に来院いただき、150名以上の患者様にIFN治療を導入してまいりました。また、多くの患者さんにご協力のもと、第二世代のDAAsであるシメプレビルやバニプレビル、また経口剤のみの臨床試験に参加、治験も含め160例以上のIFN free治療を行って参りました。これまでの臨床試験の経験と、併設されております肝炎・免疫研究センターの利点を活かし、お一人お一人にBestな治療を提供できるよう、診療を行っております。

(文責 青木孝彦)