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新型コロナウイルス感染症と子どものこころ

 新型コロナウイルスのニュースが毎日、あらゆるメディアから報道され、その情報の渦に溺れている感じがします。その感染拡大防止は喫緊の課題であり、一人一人が日々の生活を律していく必要があると感じています。

 この新型コロナウイルスの蔓延を機に、子どもたちの世界は大きく変わりました。最も大きなことは、全国一斉休校という今まで経験したこともない事態になったことです。子どもにとっても親にとっても、今後の見通しが立たない状況です。保護者の中には在宅勤務を突如命じられた人もいるのではないでしょうか。子どもたちにとっては普段はいない親がずっと家にいる環境に変わってしまいました。児童期の子どもにとっては遊んでもらえて嬉しいかもしれません。しかし、思春期にとって親が家にいると鬱陶しいと感じる一方で、社会人として仕事する親を誇らしく感じる貴重な経験かもしれません。

 この一斉休校は、夏休みと違って計画的に何かをすることが難しい現状があります。子どもたちの中には友達と遊ぶ場をなくし、自宅でテレビゲームに熱中している子もいるのではないでしょうか。自宅に篭りっきりで、兄弟喧嘩が増えた、運動不足でイライラが増えた、昼夜逆転した生活になった、などの話も診療で聞きます。逆に、家にいてゲームばかりをしていると飽きてしまう子もいますし、早く友達にも会いたい子もいます。あれほど熱望していたゲームであっても物足りなくなってきた子もいるということは、とても健康的な子どものこころの動きだと思います。

 このようにCOVID-19は私たちの生活を大きく変化させ、子どものこころに少なからず影響を及ぼしていることでしょう。ただし、私たちはこの影響の全てが異常反応と考えなくてもよいと考えています。パンデミックという異常事態に対する子どもたちの健康的な反応かもしれません。人は集団の中で成長していきますが、今はその集団に参加することが難しいのが今の生活かもしれません。

 子どもたちの健全な心を育てていくために、COVID-19を正しく恐れながら、子どものこころの変化を肯定的に捉え、その健全な情緒発達を促していければと思います。このパンデミックの後に、学校が再開され、子どもたちは同年代集団と再会することでしょう。もしかしたら、長いこと家にいて集団に入るのが怖くなってしまった子もいるかもしれません。オンライン・ゲームがやめられなくなった子もいるかもしれません。子どもたちも大人も初めての経験に戸惑っています。そんな状況だからこそ、子どもの不安や心配に理解を示しながら、大人も一緒に成長していければと思います。

 緊急事態宣言も全国で終了し、令和2年6月1日から各学校が分散登校という形ではありますが再開されました。学校という場で、子どもたちは再び同年代の集団の中に入っていくことになるでしょう。そこでは友達と会えることで嬉しい気持ちになる子どもたちも沢山いるとは思いますが、勉強のこと、友人関係のこと、これまでうまく通えていなかったことなどに苦しむ子どもたちもいるかもしれません。

 私たちもホームページなどを通じて、子どものメンタルヘルスに関する情報を適切に発信するとともに、子どもたちが健全にこの危機的状況を乗り越えてくれることと切に願っております。

 

令和2年8月
児童精神科 宇佐美政英

<資料>

<Supplements>

 <国立国際医療研究センター病院小児科より>
 たのしいあそびの時間