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消化管がん内視鏡治療

消化管がんは、内視鏡治療ができる早期段階で発見することが非常に重要です。なぜかというと、内視鏡治療はお腹を切らずに局所のみ切除する方法であり、低侵襲性・機能温存・術後のQOLの観点から優れているからです。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とは

  • 従来から行われてきた内視鏡的粘膜切除術 (Endoscopic Mucosal Resection: EMR)では小さい病変であれば十分な治療効果が期待できるのですが、20mmを越えるような大きな病変になると分割切除になってしまい、一定の頻度で再発を生じてしまうことが欠点でした。
  • それに対し、内視鏡的粘膜下層剥離術 (Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)の開発により、より大きな病変を正確に一括切除できるようになりました。ESDの普及に伴い、早期消化管がんの中でも内視鏡治療が行われるケースが劇的に増加しています)。
  • どこまで内視鏡治療を行うかは施設間で差はありますが、当科では一般的に困難病変とされる大型病変や潰瘍瘢痕合併病変についても積極的に対応し、良好な成績を収めています。

早期胃がんに対するESDの実際(図1)

  1. まず病変の周囲にレーザーでマーキング(目印)をつけます(a, b)。
  2. 次に、病変の下に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムを局注し、病変全体を持ち上げます(c, d)。
  3. マーキングの外側を、電気メスで全周性に切開します(e, f)。
  4. 病変の下を、電気メスで剥離します(g, h)。
  5. 病変が完全に切除されました(i)。
  6. 内視鏡で回収した病変は、顕微鏡検査へ提出します(j)。

(図1)早期胃癌に対するESD

早期胃癌に対するESD

大腸がんに対するESD

  • 2006年に早期胃がんのESD、2008年に食道表在がんのESD (図2)、2012年には早期大腸がんのESD(図3)が保険適応となりました。
  • 早期大腸がんのESDは、合併症の危険性や技術的困難性から保険収載が遅れた背景がありますが、2016年3月現在、当科では一例も穿孔を来すことなく安全な治療を提供しています。

(図2)食道表在癌に対するESD

食道表在癌に対するESD

(図3)早期大腸癌に対するESD

早期大腸癌に対するESD

当院のESD件数

  • 内視鏡治療のニーズの増加に伴い、当科でのESD症例数も年々増加傾向にあります(図4)。
  • 最近では耳鼻咽喉科と協力して咽頭癌のESDや外科と協力して胃粘膜下腫瘍などに対する腹腔鏡・内視鏡合同手術 (Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery: LECS) も積極的に取り入れ、必要最小限の侵襲で腫瘍切除を行うよう努めています。

(図4)当院の年間ESD件数(平成24年度から30年度)

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各患者さんへ最適な治療を提供するために

  • 内視鏡治療は大きなメリットがありますが、すべての早期消化管がんが内視鏡治療の適応となる訳ではありません。各臓器の治療ガイドラインで基準が定まっており、それから外れた病変に関しては一定の頻度でリンパ節転移を生じるリスクがあるため、外科的手術が必要となります。
  • 現在の医療では、リンパ節転移がない早期がんであるかどうかを内視鏡切除前に100%完全に診断することは不可能です。ただ、当科では出来るだけ正確な術前診断を提供するために、ほぼ全例で術前に拡大内視鏡による詳細な観察を行い、がんの質的診断・範囲診断の向上につなげています。

患者さんへのメッセージ

  • 早期消化管がんは、外科的手術まで行えばその殆どが根治を期待できる疾患です。ただ、さらに低侵襲な内視鏡治療で根治出来るのであれば、それに越したことはありません。そのためには早期発見が重要であり、早期発見のためには内視鏡検査が必要不可欠です。
  • 当科では正確な診断・安全な治療を提供するだけでなく、患者さんにとって楽な検査を提供することもモットーとしております。無症状であっても、まずは気軽に検査を受けていただくことをお勧めします。

(文責 矢田智之)

参考:

  1. Yada T, et al. The Current State of Diagnostic and Treatment for Early Gastric Cancer. Diagn Ther Endosc. 2013(外部リンク)