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B型肝炎治療

B型慢性肝炎とは

  • B型肝炎ウイルスの持続感染者は世界で約4億人、本邦での感染率は人口の約1%とされています。

B型肝炎の自然経過

  • これまで本邦におけるB型肝炎ウイルス感染者の多くは免疫能が未熟な出産時から幼少期に感染し、持続的に感染が継続する垂直感染の方でした。
  • 出産時から幼少期での感染では90%以上で持続感染に移行し、そのうちの90%が若年期にHBe抗原陽性からHBe抗体陽性へとなるHBe抗原セロコンバージョンを起こし、ほとんどの方が病態安定化した非活動性キャリアとなります。しかし、残りの約10%ではウイルスの活動が持続し慢性肝炎から肝硬変、肝細胞癌、肝不全へと進展するとされています。
  • 1972年に日本血液センターによるB型肝炎のスクリーニング検査が開始、1986年には母子感染防止事業に基づき、出生児に対するワクチン、免疫グロブリン投与されるようになったことより、新たな垂直感染が抑制されるようになりました。

B型急性肝炎の増加

  • 一方では性交渉などによる感染、それとともに欧米型ウイルスの増加が問題となっています。
  • これまで成人での感染では、急性肝炎後に免疫によりウイルスが排除され、肝炎は沈静化するとされていましたが、欧米型ウイルスの増加とともに成人期の感染であっても慢性肝炎となることも少なくなくなってきています。

B型急性肝炎の増加

B型慢性肝炎に対する治療の実際

治療の目標と適応

  • B型肝炎ウイルス感染は急性肝不全、慢性肝不全、肝細胞癌の3つの病態により感染者の生命予後に大きく寄与するため、B型肝炎に対する治療の目標は感染者の生命予後、生活の質の改善です。そのためにB型肝炎ウイルス持続感染者ではALT > 31 U/Lの方を対象として、以下の目標で治療を行います。

B型肝炎の治療目標

B型肝炎の治療目標

治療の対象

治療の対象

  • B型肝炎ウイルスに対する治療にはC型肝炎同様インターフェロン(IFN)による自身の免疫によってウイルスを抑制する治療と核酸アナログ製剤によるウイルス増殖を直接抑える治療の2種類があります。

B型肝炎に対するインターフェロン治療

  • 1987年より開始されたインターフェロン治療は、当初28日間の限定投与でありましたが、2002年には6ヶ月間へと延長、2011年からはペグ化されたペグインターフェロン(Peg-IFN)(ペガシス®)の治療が認可され、治療成績も向上しています。
  • IFN治療にはインフルエンザ症状などの特有の副作用はあるものの、治療反応後には薬剤の継続の必要性がなくなる大きな利点があります。
  • しかしPeg-IFNによる治療効果が得られるのはHBe抗原陽性で20から30%、HBe抗原陰性では20から40%にとどまります。また、肝硬変の方には今のところ保険適応はありません。

B型肝炎に対する核酸アナログ治療

  • 核酸アナログ製剤はウイルスの増殖を直接阻害する薬剤で、現在本邦ではラミブジン(ゼフィックス®)、アデホビル(ヘプセラ®)、エンテカビル(バラクルード®)、テノホビル(テノゼット®)の4種類の製剤が使用されています。
  • 核酸アナログ製剤はB型肝炎ウイルスの遺伝子型や年齢によらず、ほとんどの症例で抗ウイルス作用をきたし、肝炎を沈静化させます。その反面、投与中止により肝炎の再燃率は高く、劇症化の危険性もあることから長期投与が必要であること、長期投与によって薬剤耐性のウイルスが出現することが問題です。
  • 2006年発売のエンテカビル、2014年発売のテノホビルはラミブジンに比して耐性ウイルスの出現率は極めて低いものの、依然として長期投与は必須であり、長期投与での安全性、耐性出現率については今後も検討が必要と考えられています。

Drug-freeを目指したB型肝炎治療

  • 核酸アナログ製剤の投与中止を考慮する条件としては投与開始より2年以上経過していること、血液検査にてHBV DNAが検出感度以下となっていること、中止時HBe抗原陰性であることの3項目を満たしている症例で中止時のHBs抗原量、HBコア関連抗原量により再燃リスクを予測されます。
  • しかしながら投与中止後の再燃率は高頻度であり、時に重症化する危険性があり、投与中止後は厳重な観察が必要となります。また、核酸アナログ製剤の安全な中止を目標として、HBe抗原が陰性化しておりHBV-DNAが持続陰性の方には核酸アナログ製剤投与中に一定の期間IFNを併用し、その後IFNに切り替えるシークエンシャル治療を行っています。

表:核酸アナログ製剤中止後の再燃リスク

B型肝炎ウイルス再活性化の予防

  • 近年では様々な新しい機序を持つ薬剤が開発されております。なかでも悪性腫瘍に対する化学療法に用いる薬剤や関節リウマチなど自己免疫疾患に対する薬剤では、B型肝炎ウイルス無症候性キャリアや既往感染者からの肝炎の再活性化が報告されており、使用前にはB型肝炎ウイルスの感染歴を調べ、感染の既往があれば定期的な検査、HBV-DNAが検出される際には核酸アナログ製剤の投与が必要です。

当院では2008年10月の肝炎・免疫研究センター以来、国内外より多くの患者様に来院いただき、70例以上の抗ウイルス療法を導入してまいりました。Drug freeを目指し、IFN治療についても積極的に導入しております。経験豊かな肝臓専門医が、併設されている肝炎・免疫研究センターと協力し、薬剤耐性などの検査を行った上で、お一人お一人にBestな治療を提供できるよう、診療を行っております。

(文責 青木孝彦)