-2肝疾患研究部 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター

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血清soluble Siglec-7はNAFLDにおいて肝内炎症性マクロファージより産生され、肝線維化進行症例の診断に有用である

  非アルコール性脂肪性肝疾患 (non-alcoholic fatty liver disease; NAFLD)はわが国の慢性肝疾患において15-30%を占め、肝関連合併症および死亡の原因疾患として世界的に増加傾向にあります。NAFLD患者さんにおいて、肝線維化の病理学的ステージが生命予後に最も影響を及ぼす因子であることが知られており、その正確な診断が重要です。そこで、肝生検に代わる非侵襲的な肝線維化診断マーカーの開発が望まれています。本研究により、NAFLD患者さんにおいて血液中のsSiglec-7は、肝線維化進行症例の診断に有用であることがわかりました。また、sSiglec-7は肝内炎症性マクロファージより産生され、肝数値(GOT, GPT,γGTP)の上昇を伴わないような微小な肝内の炎症を反映するマーカーとしての可能性も期待されます。

図:肝線維化進行症例に対する血清sSiglec-7のROC曲線と決定木解析

肝細胞癌におけるMilk Fat Globule EGF-8の意義-早期診断及び術後予測マーカーとしての有用性

  肝細胞癌(HCC)の早期診断、根治術後の再発・予後予測は適切な治療を可能とし患者予後延長に繋がります。現在の肝細胞癌の腫瘍マーカー(AFP/AFP-L3%/DCP(PIVKA-II))は微小な肝癌の診断の感度、特異度は十分でありません。本研究では血清Milk fat Globule EGF-8(MFG-E8)は肝細胞癌の新規診断マーカーとして有用であり、MFG-E8と既存の腫瘍マーカーであるDCP(PIVKA-II)を併用することで、より肝細胞癌の診断能が高まることを示しました。また肝癌切除術後早期再発・予後予測のマーカーとしても応用可能であることが示唆されました。

図:肝細胞癌の診断に対する血清MFG-E8、AFP、DCP、予測モデルでのROC解析

B型肝炎ワクチン接種による抗体獲得・維持に寄与する免疫因子の解析

 B型肝炎ウイルスに感染すると、肝硬変や肝がんに至る可能性があり、その感染予防にはB型肝炎ワクチンが使用されます。接種により多くは抗体が誘導されますが、健康成人でも約1割の接種者は、抗体を獲得することができません。
 そこで、我々はB型肝炎ワクチン接種を行なった記録を後方的に解析しました。それにより、抗体の長期維持には高い抗体価を獲得することが重要であり、抗体を消失した場合であっても再接種することによって、初回より有意に高い抗体価を獲得できることを見出しました。さらに、ワクチン接種前後での末梢血中の免疫細胞・血清タンパク質を網羅的に解析し、抗体獲得には濾胞性T細胞(cTfh)、抗体産生細胞であるプラズマブラスト、形質細胞の存在が重要であり、獲得する抗体価は接種前のIFN-γとそれに関連するケモカインの値と相関することを見出しました。これらの知見が、ワクチン不応答者や早期抗体消失者対策の糸口になることが期待されます 。

図:B型肝炎ワクチンによる抗体獲得・維持に寄与する因子

肝細胞癌の線維芽細胞は、BMP4によって癌を促進するフェノタイプに誘導される。

 癌の微小環境において、癌関連線維芽細胞(CAF)が重要な役割を担っていることが、近年明らかになってきました。今回我々は、CAFの活性化のメカニズムを明らかにするために、肝細胞癌患者から癌関連線維芽細胞を分離し、BMP4がその活性化に寄与していることを明らかにしました。この結果は、肝癌の新たな治療法の確立に有用であると考えられます。

図:線維芽細胞の分離(A)とサイトカイン産生の比較(B)  
 CAF:癌関連線維芽細胞、NF:非癌部線維芽細胞

B型肝炎患者におけるHBs抗原消失に寄与するサイトカイン・ケモカイン動態の発見

 B型肝炎ウイルスの持続感染者(HBs抗原陽性者)では肝硬変・肝がんに至る可能性があります。現在の治療では臨床的治癒(HBs抗原消失)に至る可能性が低く、新規治療の開発が望まれています。そこで我々は、B型急性肝炎・B型慢性肝炎患者においてHBs抗原陰性化達成症例と非達成症例の間で血清因子の網羅的探索を行うことで、HBs抗原陰性化には、CXCL9, CXCL10, CXCL11, CXCL13, IL-21の誘導が重要であることを見出しました。この結果は、B型肝炎治療の新しい突破口になると考えられます。

図:急性B型肝炎治癒例におけるケモカイン・サイトカイン動態


腫瘍壊死因子による肝細胞アポトーシスは脂肪肝における肝線維化を促進する

 近年、脂肪肝炎による肝硬変患者数が増加してきました。しかし、脂肪肝炎による肝線維化のメカニズムについては不明な点が多いです。本研究では、高脂肪食を負荷することにより脂肪肝を誘導したマウスに、腫瘍壊死因子による肝細胞アポトーシスを誘導すると肝線維化が誘導されることを明らかにしました。その際、血清ALT値の上昇は認められなかったことから、ALT上昇をきたすほどの肝細胞障害がなくても、肝細胞アポトーシスさえ誘導されれば肝線維化をきたすことを明らかにしました。また、肝細胞アポトーシスと肝線維化にWntシグナルが関与することを明らかにしました。今後、Wntシグナル阻害剤による治療法の確立が期待されます。


Tie2陽性単球(TEM)は切除不能進行肝がん患者におけるソラフェニブ治療効果に寄与する

 ソラフェニブ治療は切除不能肝細胞癌患者にとって唯一の治療法ですが、副作用による中止例が多く、治療継続症例においても奏効率が低いことが問題です。われわれは、Tie2陽性単球(TEM)は肝癌における血管新生を反映し、肝癌の診断・再発予測に有用であることを以前に報告しました。そこで、今回ソラフェニブ治療により生存期間の延長が期待できる症例を判別することを目指して、TEMの治療効果関連因子としての有用性を検討しました。
 ソラフェニブ治療を導入した進行肝細胞癌患者25例を対象とした多施設前向きパイロット試験を行い、末梢血TEM頻度の治療後1か月における治療前からの変化量と肝機能が生存率に独立して寄与していることを明らかにしました。ソラフェニブ治療後の末梢血TEM増減はソラフェニブ治療により生存期間の延長が期待できる症例を判別する因子として期待されます。


血清YKL-40値は非アルコール性脂肪性肝疾患の有用な
線維化診断マーカーである

 非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease ; NAFLD)は慢性肝障害の原因として最も多く、またNAFLDのうち約20%は非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis ; NASH)と呼ばれる線維化や壊死・炎症を伴う病態に発展し、肝細胞癌のリスクが高まるとされています。臨床の現場では、NAFLD線維化診断の指標が必要とされています。本研究はNAFLDにおける血清YKL-40値が線維化進行に従って上昇し、高度線維化の指標となり得ること、またYKL-40と既存の線維化マーカーである血清Type IV collagen 7s値を用いた判別式で、より線維化判別能が高まることを示しました。また免疫染色を用いて、NAFLDにおけるYKL-40の産生細胞は肝臓内のマクロファージであることを示しました。YKL-40がNAFLDにおける線維化診断マーカーとして有用であることが明らかになりました。


非アルコール性脂肪性肝疾患において
Interleukin-34(IL-34)は肝線維化ステージ診断に
有用である

 近年、非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease; NAFLD)患者さんが増加傾向にあります。NAFLDはウイルス性肝疾患同様に進行性に肝臓の線維化をきたし(肝線維化)、発癌リスクを上昇させることが報告されています。肝線維化のステージを正確に診断することは臨床的に重要です。 われわれはInterleukin-34(IL-34)が肝臓内に存在する肝線維芽細胞から多く産生されること、IL-34の血中濃度が肝線維化の進行に伴い上昇すること、血清IL-34が優れた肝線維化ステージ診断能を有することを明らかにしました。さらにType IV collagen 7sや年齢を加えた重回帰式=0.0387*IL-34(pg/ml)+0.3623*type IV collagen 7s(ng/ml)+0.0184*age(year)は既存の肝線維化診断マーカーよりも線維化診断能に優れていることが明らかになりました。IL-34により非侵襲的に正確な肝線維化ステージ診断が可能となることが期待されます。


B型肝炎、C型肝炎における免疫応答(総説)

 B型、C型肝炎ウイルスは世界で5億人を超える感染者がいます。これらの肝炎ウイルスは肝臓に炎症をおこし、年月を経て肝硬変、肝がんを発症します。肝炎ウイルスはヒトの体内で生き延びるために、巧妙にヒトの免疫反応から逃れます。この総説では、近年のB型、C型肝炎における免疫研究の近年の進歩に関して、自然免疫を中心に紹介しています。新しい免疫療法を開発する上で、ヒト臨床検体を用いた包括的な研究がますます重要性を増してくると我々は考えています。


IDO (Indoleamine-2,3-dioxygenase)はB型急性肝炎における非細胞傷害性ウイルス排除に重要である

 成人期におけるB型急性肝炎では、B型肝炎ウイルス(HBV)の排除率は95%以上です。一方、B型慢性肝炎においては、HBV排除は年率1%未満です。私たちは、IDOがそれぞれの病態におけるHBV排除率の違いを決定する重要な分子であることを明らかにしました。IDOは必須アミノ酸であるトリプトファンの代謝酵素ですが、感染症において免疫抑制作用と抗ウイルス作用の二面性を持つことが知られています。急性肝炎患者において、血液中のIDO活性は感染早期に顕著に上昇していました。一方、慢性肝炎患者の急性増悪期ではIDO活性の上昇を認めませんでした。ケモカインによって肝臓に遊走したナチュラルキラー(NK)細胞と樹状細胞がHBVの感染した肝細胞にIDOを誘導し、IDOが肝細胞を破壊せずにウイルスを排除する効果を示すことを発見しました。これは、HBVの完全排除を目指す治療法の開発に重要な示唆を与える結果であると考えられます。



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